DEVELOPMENT NOTE
最初に作ったのは、画面ではなく『状態の一覧』でした。
マッチングサイトを企画すると、トップページや検索画面から考えたくなります。私たちも最初はそうでした。ただ実装を進めると、難しかったのは見た目ではありません。掲載をいつ公開するのか。問い合わせ後、何が終われば会話を始められるのか。取引終了後はどこまで操作を残すのか。先にここを決めないと、あとから画面同士が矛盾します。この記事では、その順番から説明します。
PART 01
トップページから作り始めると、途中で止まりやすい
マッチングサイトを作ろうとすると、最初に欲しくなるのはトップページ、検索画面、会員登録、チャットです。目に見えるので話もしやすい。ただ、実際に無料不動産を作ってみると、そこで先に決めるべきだったのは画面ではありませんでした。
たとえば『問い合わせ』。買い手はログインしていれば押せるのか。本人確認が終わっていなければ、その場で止めるのか。問い合わせ自体は作っておいて、確認後に会話だけ開くのか。出品者側にも確認が必要なら、どちらが終わった時点でチャットをOPENにするのか。
この答えが決まらないままチャット画面を先に作ると、あとで条件分岐を足すことになります。そこで私たちは、画面を増やす前に『誰が・何の状態なら・次に何ができるか』を表にしました。マッチングサイトは、ここから始める方が結果的に早いです。
PART 02
開発前に決めたい10項目。仕様書より先に、この表を埋める
最初から詳細な仕様書を作る必要はありません。次の10項目を一行ずつ書くだけでも、開発の輪郭はかなり見えます。分からない項目は『未定』で構いません。未定だと分かること自体が大切です。
| 項目 | 先に決めること | 曖昧なままだと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 1. 誰と誰をつなぐか | 売り手・買い手、企業・個人など | 登録項目と権限が後から増える |
| 2. 何を掲載するか | 商品、案件、プロフィール、サービス | 検索条件とDB項目が定まらない |
| 3. いつ公開するか | 即時公開、審査後、下書き | 公開してはいけない情報が出る |
| 4. どう探すか | 地域、価格、カテゴリ、地図 | 検索用データを作り直す |
| 5. 最初の接点 | 問い合わせ、応募、購入申請、予約 | 重複や受付停止の処理が増える |
| 6. 信頼確認 | 本人、事業者、所有、資格など | 安全性か登録率のどちらかに無理が出る |
| 7. やり取り | サイト内メッセージ、メールなど | 開始・終了条件が曖昧になる |
| 8. 料金発生点 | 掲載、月額、応募、成約、決済 | 後から契約状態を作り直す |
| 9. 終了条件 | 成約、キャンセル、期限切れ | 終了後も操作できてしまう |
| 10. 運営作業 | 審査、通報、停止、修正、請求 | 管理画面が不足し手作業が増える |
PART 03
『誰と誰をつなぐか』は、会員登録フォームより深い話
売り手と買い手がいる。ここまでは簡単です。でも両者が同じアカウントで立場を切り替えられるのか、売り手専用・買い手専用に分けるのかで、データの持ち方は変わります。法人と個人が混ざれば、さらに組織という単位も必要になるかもしれません。
無料不動産では、同じサービス内で出品側と問い合わせ側の役割を扱います。一方、本人確認のタイミングは同じではありません。役割が同じDBに入ることと、同じルールで動かすことは別です。
会員種別を決めるときは、名前だけではなく『この人は何を見られるか』『何を登録できるか』『誰と接触できるか』まで書きます。ここが権限設計の出発点です。
PART 04
本人確認は、登録直後ではなく『危険が増える直前』に置く方法もある
本人確認を最初に必須にすれば、確認済みの人だけがサービスへ入れます。ただし、まだ何ができるサイトか分からない段階で身分証を求めるため、登録のハードルは上がります。
そこで、出品前、購入申請前、問い合わせ前、メッセージ開始前といった節目に置く方法があります。無料不動産では、買い手はやり取りに進む前、売り手は出品時など、行為に合わせて確認を分けています。
『本人確認あり』だけでは仕様になりません。誰に、どの操作の前に、何を確認するか。この3つをセットで決めます。
PART 05
問い合わせとチャットは、別の機能として考える
問い合わせボタンを押した瞬間にチャットルームを開くサービスもあります。ただ、信頼確認が必要なサービスでは、問い合わせを受け付けることと、会話を許可することを分けた方が扱いやすい場合があります。
無料不動産では、問い合わせスレッドを先に作り、必要な確認が残っている間は『確認待ち』として扱います。条件が揃えばOPENになり、そこで初めてメッセージを送れる。取引が終われば新規の問い合わせは止めつつ、既存のやり取りには猶予期間を持たせます。
こうすると『問い合わせは届いたが、まだ会話はできない』という状態を正しく表現できます。チャット画面だけ作ってしまうと、この中間状態が置けません。
PART 06
管理画面を最後に回すと、運営開始日に困る
利用者向けの画面は目立つので、どうしても優先したくなります。ところが本番公開の日から毎日使うのは管理画面です。審査待ちを探す、承認する、差し戻す、ユーザーを停止する、問い合わせ状態を確認する。
利用者が10人ならDBを直接見ても何とかなるかもしれません。100人、1,000人になると続きません。最初から分析ダッシュボードまで作る必要はありませんが、日常運営に必要な操作だけは先に用意します。
目安は『公開後、運営担当者が毎日何をするか』。この質問に答えると、必要な管理画面が見えます。
PART 07
最初から全部を自動化しない。手作業を残す方が学べることもある
初期段階では、審査や成約確認を人が行う方が合理的なことがあります。件数が少ないのに複雑な自動判定を作っても、そのルール自体が運営後に変わるかもしれないからです。
手作業を残すと、『このケースは想定していなかった』『ここは毎回同じ作業になる』が見えてきます。同じ処理が繰り返されるようになったら、そこで自動化する。利用者が増えるほど、この順番が効いてきます。
ただし、手作業でも履歴は残したいところです。誰が承認したのか、いつ状態が変わったのか。後から自動化するときにも、その記録が仕様書代わりになります。
PART 08
最初の公開版で残すのは、『需要があるか』を確認できる機能
新しいサービスなら、最初に何を確かめたいかを一つ決めます。たとえば『掲載者が集まり、検索した人から問い合わせが来るか』。これが答えなら、会員登録、掲載、検索、詳細、問い合わせ、最低限の管理で公開できます。
決済、レビュー、ランキング、高度な通知は後でもよいかもしれません。逆に、本人確認がないと信用されない事業なら、それは初期から必要です。MVPという言葉より、『この公開で何を確かめるか』と聞く方が分かりやすい。
PART 09
最初の仕様書は、機能一覧より1本の利用者フロー
何十個もの機能をExcelに並べる前に、主要な利用者が目的を達成するまでを一行で書きます。
『売り手が登録→掲載→審査→公開→買い手が検索→問い合わせ→確認→会話→取引終了』。これだけでも、必要な状態が見えます。売り手が途中で掲載を取り下げたら? 買い手の確認が終わらなかったら? 取引終了後の履歴は? と、次の質問が自然に出てきます。
仕様を細かくするのは、その後で十分です。一本道を先に作ると、機能が増えても『何のための機能か』を見失いにくくなります。
PART 10
作る機能より、成立させたい取引の流れを先に決める
マッチングサイトの設計で大切なのは、機能数を増やすことではありません。誰と誰をつなぎ、何を公開し、どこで信頼を確認し、どうやり取りし、どの時点で終了するか。この流れを矛盾なく通せることです。
実際にサービスを作ると、公開後に必ず新しいケースが見つかります。だから最初から完璧を狙うより、変更しにくい権限・状態・データの骨格を先に決め、画面や付加機能は段階的に増やす。私たちはこの順番を基本にしています。
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会員種別、権限、掲載、検索、問い合わせ、審査、決済、管理画面まで、現在必要な範囲から段階的に設計・開発します。
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