TRUST DESIGN NOTE
本人確認は『登録時に全員』ではなく、リスクが上がる場所に置く。
本人確認そのものより難しいのは、確認前に何を許可し、確認待ちの間に何を止め、失敗した人をどこへ戻すかです。無料不動産でも、本人確認と掲載側の確認を分け、問い合わせやメッセージの可否へつないでいます。確認機能は単体ではなく、権限の一部として設計します。
SECTION 01
本人確認は、全員へ登録直後に求めればよいわけではない
本人確認が必要なサービスでも、登録した瞬間に全利用者へ書類提出を求めるとは限りません。掲載する人だけ、問い合わせする人だけ、高額取引へ進む人だけなど、確認するタイミングを分けられます。
最初に決めたいのは『本人確認が終わるまで、何を禁止するか』です。閲覧はできる、保存もできる、ただし問い合わせ前に確認する。あるいは掲載前だけ確認する。この線を決めると、利用者の負担と安全性を両立しやすくなります。
なお、法令上必要な本人確認の範囲は事業内容によって異なるため、対象となる業法や専門家の確認が必要です。ここではサービス設計としての考え方を扱います。
SECTION 02
本人確認と、掲載内容・権利の確認は別の状態にする
本人であることが確認できても、その人が掲載する商品・物件・案件について必要な権利を持っているとは限りません。無料不動産では、利用者本人の確認と、物件側の確認を分けています。
一つの『確認済み』フラグにまとめると、後から『本人は確認済みだが、この掲載は未確認』を表現できません。確認対象が違うものは、状態も分ける方が管理しやすくなります。
SECTION 03
確認タイミングは、リスクが上がる操作の直前に置く
本人確認を早く求めるほど安全に見えますが、登録直後の離脱も増えやすくなります。逆に、最後まで確認しないと不正掲載やスパム対応が増える可能性があります。
閲覧、掲載、問い合わせ、メッセージ、決済、出金。この中でサービス上のリスクが大きくなる操作を選び、その直前で確認する方法があります。Stripe Identityも、高リスクな機能を許可する前などに本人確認を追加する用途を示しています。
| 確認タイミング | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 登録直後 | 会員になる時点で高い信頼が必要 | 登録離脱が増えやすい |
| 掲載前 | 出品者・提供者の信頼が重要 | 閲覧側には負担をかけない |
| 問い合わせ前 | 接触前に利用者を確認したい | 興味を持った後に確認導線が入る |
| 決済・出金前 | 金銭移動時の確認が重要 | それ以前の不正行為対策は別途必要 |
SECTION 04
状態は『未確認 / 確認済み』の2つでは足りない
実運用では、未提出、確認中、追加資料待ち、承認、否認、期限切れ、再確認などが発生します。外部の本人確認サービスを使っても、サイト側で現在の状態を持たなければ利用者へ適切な案内ができません。
特に差し戻し時は、ただ『失敗しました』ではなく、再申請できるのか、別の書類が必要なのか、運営へ問い合わせるのかを明確にします。
- 未提出
- 確認処理中
- 追加確認が必要
- 承認済み
- 否認・再申請可能
- 期限切れ・再確認必要
SECTION 05
確認済みバッジは、何を確認したか分かる表示にする
プロフィールへ『確認済み』と表示すると、利用者は広い意味で安全だと受け取る可能性があります。実際には本人確認だけで、資格や所有権までは確認していないこともあります。
表示するなら、『本人確認済み』『事業者確認済み』『掲載内容確認済み』など、何を確認したかを分ける方が誤解を減らせます。内部の審査状態と、ユーザーへ見せるラベルは同じでなくても構いません。
SECTION 06
本人確認書類を自社で長く持たない設計も検討する
本人確認書類は機密性の高い情報です。必要以上に自社システムへコピーして保持すると、守る対象が増えます。外部の本人確認サービスを利用し、自社側では確認結果や必要最小限の情報だけを持つ構成も候補です。
Stripe Identityでは、確認データの保存やアクセス制限、データ削除などの仕組みを提供しています。どのサービスを使う場合でも、取得する情報、保存期間、閲覧できる担当者を最小化する考え方が重要です。
SECTION 07
管理画面では、審査結果より『次に何をするか』が分かるようにする
運営側が必要なのは、承認済みの人数だけではありません。誰が確認待ちで、誰が追加資料待ちで、どの申請を今日処理する必要があるかです。
一覧では状態、申請日時、最終更新、次の操作を見せます。詳細では承認・差し戻し・停止を行い、誰が判断したかを残せると運用しやすくなります。
SECTION 08
本人確認とサイト権限を、同じルールへつなぐ
画面上で『本人確認が必要です』と出しても、API側では問い合わせを送れてしまうなら意味がありません。本人確認状態を、サーバーやデータベース側の権限判定にも使います。
無料不動産でも、確認状態に応じて問い合わせやメッセージの可否を分けています。UIだけで止めず、実際の操作権限と同じ条件にすることが大切です。
SECTION 09
再確認が必要になる条件も最初に決めておく
一度承認したら永遠に確認済み、とは限りません。重要情報を変更した、長期間利用していない、外部サービス側で再確認が必要になったなど、再確認のきっかけが発生することがあります。
本人確認そのものを自社で判定しない場合でも、再確認が必要になったユーザーをどの権限へ戻すかはサイト側の仕様です。問い合わせだけ止めるのか、掲載も非公開にするのかを決めます。
SECTION 10
本人確認は、信頼を増やす機能であると同時に離脱ポイントでもある
本人確認を追加すれば安全性は上げられますが、入力・撮影・書類提出が増えるほど離脱する利用者もいます。全員へ同じ確認を求めるのではなく、必要な人へ必要なタイミングで求める設計が重要です。
公開後は、本人確認開始率、完了率、失敗率、再申請率、その後の問い合わせ率などを見ます。安全性だけでなく、利用者がどこで止まっているかも確認しながら改善します。
QUESTIONS
よくある質問
Q. マッチングサイトでは本人確認が必須ですか?
すべてのマッチングサイトで必須とは限りません。事業内容、扱う商品・金額、リスク、適用法令によって異なります。必要な場合でも、登録時ではなく掲載前や問い合わせ前などに行う方法があります。
Q. 本人確認と事業者確認は分けた方がいいですか?
確認対象が違うため、分けて管理する方が扱いやすいです。本人確認済みでも法人情報や掲載内容の確認が残っているケースを表現できます。
Q. 本人確認に失敗したユーザーはどう扱えばいいですか?
再申請を許可するのか、追加資料を求めるのか、運営確認へ切り替えるのかを決めます。単純なNGだけでなく次の操作を用意すると問い合わせも減らせます。
Q. 外部のeKYCサービスを使えますか?
利用できます。外部サービスの結果をサイト側の会員状態や権限へ連動させる設計が必要です。保存する個人情報を最小限にする観点でも比較します。
参考資料
相場や仕様に関する数値は公開情報を参照しています。個別案件の見積額を示すものではありません。
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企画から公開までの全体像は「マッチングサイトの作り方」へ
費用や機能を個別に比較する前に、誰と誰をつなぐか、MVPをどこまで作るか、公開後に何を見るかを一つの流れで整理できます。
マッチングサイトの作り方を読む